まず、近年の女性の労働市場の動向を概観した。これにより、既婚女性の就業行動や出生行動の特微を把握し、期待される雇用政策や少子化対策を明らかにした。 次に、女性を対象におこなわれた就業や出生に関するアンケート調査の結果を基に、これと保育サービス指標のデータをマッチングさせ、家計が利用できる保育サービスと出生行動との関係についての実証分析をおこなった。具体的な分析は、家計が選択する子どもの数が、家計の居住する自治体で提供されている保育サービスによってどのような影響を受けているのかを明らかにするものである。保育サービスについては、認可保育所の低年齢児向け保育サービスの充実度や、延長保育の充実度に注目した。これらは90年代の少子化対策において重点的な改善目標としてあげられていたものである。 実証分析の結果から明らかになったことは、家計の選択する子どもの数は、認可保育所で供給されるサービスが多いほど、正の影響を受けるということであった。具体的には、全体の定員数や、低年齢児の受け入れ枠が多いほど、子どもの数は増加する。しかし、延長保育といった認可保育所の開所時間の増加は、子どもの数には影響を与えていないという結果を得ることができた。 したがって、少子化対策として認可保育所に期待されるものは、まずは全体の定員の増加や低年齢児向けの定員の増加といった、保育サービスの供給量の増加であることが示唆された。
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