昨年度行ったエコタウン地域における経済活動と市民活動分野の連携・融合の実態を踏まえ、今年度は、こうした動きをさらに促進するための政策的取り組みについて調査・分析を行った。文献サーベイを行うとともに、国や自治体(とりわけエコタウンを展開している北九州市)において、社会的ビジネス育成策の変遷をとりまとめた。これによって、社会的ビジネスの分析がリーダーの能力などを重視する「起業家アプローチ」から、組織論や環境論を重視する方向へとシフトしつつあること、それにともなって近年の育成政策が起業セミナーなど直接的なものから環境整備を含めた総合的施策へと展開されてきたことが明らかになった。 この過程でいくつかの課題が判明した。まず、国の施策の多くは中小企業振興や地域団体支援など従来の施策が援用されている点が多く、体系的な社会的ビジネス支援策が形成されていない点が挙げられる。また自治体の施策については、支援策の知名度や趣旨の理解が十分ではない点、イベント的事業に多くの資源が配分されている問題点、市民生活を担当する部局と産業振興部局の連携が不十分であることなどを明らかにした。 これらの分析を踏まえ、社会的ビジネス振興と地域の産業政策との関連性の強化、ターゲッティングの重要性、市民活動を振興する政策と事業性を重視する社会的ビジネス振興策の棲み分けなどの政策提言を行った。
|