研究課題
20年度は、中央銀行による総需要への操作変数としての金融政策とそのありかたについて研究を進めた。岡村は、当初予定していたJudd and Rudebuschによる、恒常所得仮説を利用したシュミレーションによるトレンドの除去について、理論的基礎の考察を進めたが、実際のデータへの適応が21年度の研究課題として残された。松川はこれまでの理論研究の成果を応用して、アメリカの裁量的な金融政策の2類型としてしばしば指摘される、1979年以前の総需要管理政策(activist monetary policy)と、グリーンスパン時代の裁量型政策を比較し、より積極的な調整を行う後者のほうが実はよりデフレ的であり、かつ前者が安定的であるのに対して、後者は不安定であることを指摘した。最近の世界の経済情勢をみると、デフレ傾向が強まる一方で、世界経済はその不安定性を増している。この理論はこの事実と整合的であるところに、その重要性がある。また最近の世界経済の不安定性の原因を理論的に指摘した論文はまだ発表されていないので、この研究はその先駆としての意義を持っている。瀧は、20年度も、自然率と金融政策の関係について、理論的・実証的な研究を進めた。自然率に関係する潜在的なアウトプットとの関係について、その計測をおこなっているOECDにおける聞き取り調査と資料収集をおこなった。また、自然率の変動について、「慣性の法則」に相当する現象がみられることを中心として考察し、その暫定的な研究成果を、マドリッド連合大学においておこなわれた国際ワークショップで発表した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)
Discussion Paper New Series, Faculty of Economics, Osaka Prefecture University 2008-03