研究概要 |
景気指標など速報から確報へのデータ改定の影響について分析する場合,Real-Timeデータの整備が必要であり,これまで米国やイギリスなどの中央銀行,欧米の特定機関が自国のReal-Timeデータの整備を進めてきたものの,日本ではこれまでのところデータベースの構築は行われていない。本研究の目的は,主要景気指標(GDP(需要項目を含む))、鉱工業指数,労働関連統計,資本ストック統計)についてリアルタイムデータベースの構築を行い,また,日本におけるリアルタイムデータの特性について分析を行うことある。 今年度は,鉱工業指数(生産,出荷,在庫,在庫率)のリアルタイムデータの構築を完了し,鉱工業生産指数の速報値の合理性分析をおこなった。同時に,景気指標の公表が市場の価格形成に与える影響について,四半期GDPをもとに分析をおこなった。 鉱工業生産指数に対する市場の関心は季節調整指数の速報値に集中している。しかし,必ずしも季節調整指数の速報値は最終的な経済状況を示す最終確定値の合理的な予測値ではなく,季節調整指数の速報値で政策判断や景気判断を行うことは最適とはいえない。この点は,先行研究において示された結論と同様である。また,原指数の速報値は最終確定値の合理的な予測値と利用可能であるが,その後の改定(確報)で上方修正されやすく,更なる改定で下方修正される可能性があることが判明した。 では,合理的な予測値でない景気指標の発表と市場の反応を検討すると,四半期GDPにおける新推計方式の採用により,四半期GDPの変動性が大きく低下している.この結果,四半期GDPの予測の分散が低下していることが確認できる。つまり,推計方法の変更などによる速報値の改善が市揚への影響を抑制することを意味している。 来年度以降,順次,リアルタイムデータを構築し,日本におけるデータの特性分析を行う予定である。
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