研究概要 |
本研究は,日本におけるリアルタイムデータのデータベースの整備及びリアルタイムデータの影響(データ改訂の影響)について分析している リアルタイムデータの整備では景気動向指数,物価指数,機械受注を完了した.景気動向指数については,先行指数の予測力についてDiebold and Rudebusch(1991)にならって検証した.先行指数は評価時点で利用可能なファイナルデータによる予測よりリアルタイムデータを用いた予測の方が統計的に有意に優れており,アメリカのCLIの予測力とは異なった結果となった.これは,日本の先行指数は,将来のデータ改訂を見込んだ予測ができ改訂毎の予測力の結果についてみると,改訂を経る毎に予測力の低下が統計的に有意に認められる.改訂を経る毎に予測力が低下するのは,改訂のたびにin-sampleの期間が長期化し,戦後の全ての景気基準日付と合致するような指標の選択及びその合成としてのCLIを作成することが困難であることを示していると考えられる.このように,リアルタイムデータを用いることにより,景気動向指数の問題点がより明確になったと考えられる. データ改訂に影響では,プロの予測者のGDP予測では必ずしも観察されない.予測形成の理論に関する議論は,マクロ経済予測の利用者が正確な予測を求めることを前提に,予測者は予測における誤差を最小化させるとの仮定で進められてきたものが多い.しかし,"principal-agent"問題が存在する限り,公刊されているプロの予測者による予測集計調査から期待形成を計測できない,とLamont(1995)は主張している.予測者は,自らの能力への信頼を操作するために,予測の正確性を犠牲にしてまでも評判(reputation, publicity)を意識した特徴的な予測を行うインセンティブを有する.日本では,当初に発表した予測におけるポジションを維持することを意識した予測形成が行われていることが示された.月次に追加される情報は必ずしも有効に利用されていないと考えられる.つまり,リアルタイムデータの影響が限定的な場合があることが示された.
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