研究概要 |
平成19年度においては,日本の自動車産業における事業所間の技術の補完性及びスピルオーバーの効果を計測するための基礎データの収集・加工,及びベースラインとなる推計モデルの事前推定を行った. 具体的には,(1)『工業統計調査』及び『企業活動基本調査』の個表データベースについて,変数の取捨選択・加工(2)『工業統計調査』及び『企業活動基本調査』の個表データベースについて,変数のマッチング(3)『日本の自動車部品工業』を用いて,トヨタ自動車の「協豊会」,日産自動車の「日翔会」など垂直的系列組織に属しているかどうかについてのデータベース作成・加工(経済的距離変数の作成),『工業統計調査』及び『企業活動基本調査』の個表データベースとのマッチング(4)個表データベースを用いた場合の生産関数のベースラインと考えられる,Levinsohn and Petrin(2003)の推計手法を用いた推計を行っている.Levinsohn and Petrinの推計方法は,生産量と生産要素投入量の同時性の問題を回避するため,近年用いられている手法であり,我々の推計においても基本となるものである.また,事業所間のcross-sectional dependenceを考慮するため,空間計量経済学的な手法であるConley(1999)の推計手法を用いた生産関数についても推計結果を示している. 推計結果として,Whiteの分散不均一性を考慮した標準偏差の推定値は,Conleyの推計手法を用いた標準偏差の推定値と比べて過少推定である可能性が示されている.また,Levinsohn and Petrinの方法を用いた推計結果については,サンプル数が十分存在する場合には,Conleyの方法と同様の標準偏差となることを示している.平成20年度では,Levinsohn and Petrinの方法にcross-sectional dependenceを考慮したモデルの推計を行いたいと考えている.
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