近藤は日本とインドネシア並びにフィリピンの間で締結されたEPAの内容に、看護及び介護労働者の導入並びに日本での再教育がプログラムされている点に着目し、その経済的な影響の理論分析を試みた。受け入れ国政府は何人の受け入れを行うかをアナウンスするのではなく、職業教育プログラムの期間のみをアナウンスし、受け入れる労働量を内生的変数として扱う方が、経済政策上目的達成のための政策が選択しやすく好ましいことを示した。また、国際労働移動の持つ頭脳流質の面に着目して、途上国の頭脳流出が環境汚染をグローバルに拡大させるモデルを用いて、頭脳流出が送り出しと受け入れ両国のほとんどの住民にとって負の影響となるケースの存在を示し、ギリシア・テッサロニキの学会で発表した。 藪内は、少子高齢化社会における労働移動の戦略的な利用への応用を念頭にその予備的な考察として、失業が存在する経済において、熟練労働と非熟練労働の流出入が当該経済に及ぼす効果について、主として2種類の労働者間の賃金格差や産業構造に及ぼす効果について分析を行った。その結果、失業が存在する状況の下では、熟練労働の流入は賃金格差を縮小し、非熟練労働の流入はそれを悪化させるという経済学の常識に反し、本研究ではどのタイプの労働の流入も賃金格差を悪化させる可能性が見出された。 多和田は農村と都市の間の労働移動を分析するハリス・トダロー・モデルに環境汚染を導入し、その動学的調整過程の安定性を考察する研究を行った。
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