本研究は、ASEANにおける自動車産業の重要拠点との位置づけが進んでいるタイにおいて、自動車産業がどのように労働集約的から知識集約的産業へと構造変換を遂げることができるのかを調査し分析するものである。 タイでは、近年特に日系企業からの直接投資が活発で、タイ現地への技術・技能の形成も進みつつあるが、実際、その技術移転の速度や技術内容はどの程度進んでいるのであろうか。本研究では特に自動車部品産業の研究開発(R&D)に関わる技術者を中心に、技術形成の過程を調査している。19年度は、部品の国産化から見た技術料の発展段階、開発プロセスの現地化から見た発展段階について調査を進めている。本研究においては、タイ技術者の技術形成の発展過程を分析する方法に特徴があると考えている。 具体的に、19年度は、自動車メーカーと部品サプライヤーの双方における研究開発の過程を分析し、5項目の重要調査項目を洗い出した。さらに、その5項目において、約20社の部品サプライヤーを調査し、需要5項目に関わる部署がタイのサプライヤーに実在しているのか、またどの程度機能しているのかを調査している。次に、実在しているのであれば、その部署の技術者または責任者がタイ人であるか、または日本からの駐在員であるかを調べ、タイ人であれば、どのような過程を経て、そのタイ技術者が現在の実力を身につけたかを調査している。 19年度はこの5項目の洗い出しと、サプライヤーでの実在度と担当者までを分析し、国際学会International Convention of Asian Scholars No.5で論文Skill Formation of Research and Development Engineers in the Thai Automobile Industry.マレーシアクアラルンプールにて報告した。現在タイの研究者とも協力体制を取りながら研究を進めている。
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