本研究は、労働集約的産業から知識集約的産業に構造変換を進めているタイにおいて、実際に技術形成がどの程度進んでいるのか、技術別進捗状況の把握を目的に取り組んだ。ASEAN諸国内において、タイは自動車産業の集積を2000年以降は特に著しく進展させ、アジアのデトロイトと呼ばれるまでに至っている。その中で、開発研究(R&D)に対する投資も急増してはいるが、研究開発(R&D)に従事する技術者の技術形成速度や技術内容については限定的であるといえる。 このような目的・背景のもと、本研究では、タイ技術者の技術力を図る方法として、まず開発設計プロセスを分解分析し、主要5項目である評価ポイントを決め、現地企業での23社での調査を行った。その5項目は、部品、ツーリング、開発の各コスト、リードタイムの見積書作成能力、(2)承認図作成能力、(3)試作品作成能力、(4)生産治具や金型の製作能力、(5)生産後の技術フォロー能力である。 研究結果で明らかになった点は、日系100%部品企業では、日本側もしくは日本人駐在員の開発部門での割合が非常に高いが、日系合弁や、タイ100%企業においては、施策、金型・治具設計においてはタイ人技術者が担当し、技術力は確実についてきていることを確認した。特に金型設計製造においては、タイ側、タイ人技術者が100%の場合も多く、技術形成が准んでいることを明らかにした。このように、特に金型設計製造技術の技術形成が進んできた背景には、積極的な技術者育成政策が特に金型を中心に進められている結果とも考えられる。反面、他の主要開発技術については、未だ限定的であることも分析し、今後の課題として提言した。今後、これらの結果の継続的調査を必要と考える。
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