研究概要 |
3年計画の初年度に当たる本年度は、まず文献調査から中小企業のイノベーションに影響を及ぼしていると考えられる項目の抽出を行った。その後、これらの項目を調査内容に盛り込んだアンケート調査票を作成し、中小企業新事業活動促進法の認定を受けている企業の中から5,000社を抽出し、それら企業に対して郵送法による調査を実施した。主な調査項目は、(1)企業・経営者のプロフィール、(2)経営環境と企業戦略、(3)企業の組織・風土、(4)イノベーションの発生状況と成果、(5)新規事業やプロジェクトへの取り組み、(6)地域との連携・集積メリットの活用、(7)公的支援の利用状況、(8)その他である。その結果、893社からの返信を得た(有効回答率17.9%)。 このデータを使用しイノベーションが生起している要因について分析を行った結果、企業が強みと感じている分野で、イノベーションが発生していることが明らかとなった。例えば、「製品・サービスの魅力」を強みと感じる企業では、新製品の開発、新規顧客この開拓、さらには新組織の構築が実現されているのである。また、「ITの活用」を盛んに行う企業では、新方式の導入が実現されているのである。さらに、産業集積とイノベーションとの係わりについてであるが、地域内で産業集積が存在していることを認知し、その機能を積極的に活用している企業で、新方式の導入や新供給先の確保でイノベーションが生起していることが明らかとなった。 これらの結果、中小企業でイノベーションが創発・促進される要因の一部が解明されたことは、今後の中小企業のイノベーション活動をより効果的に行うために有益になるものと考えられる。
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