研究概要 |
本年度は,新たな取組に積極的に挑戦する中小企業を対象に実施した平成19年度及び20年度のアンケート調査から得られたデータを基に,計量分析を行うとともにその成果発表に努めた。主な研究結果は、以下に記すとおりである。 1.一般的に中小企業は,経営資源の不足からICTの導入やその活用面に遅れがあると考えられるが,中には少ない資源を有効に活用し成果をおさめている企業が存在する。そのため,中小企業に対する各種の支援施策は,多様な中小企業を一律に扱うのではなく,個々の企業の実態に即し彼らの経営意欲の向上につながる対策を講じる必要がある。 2.新製品・新サービスの販売や新市場の開拓を実現している中小企業の成功要因を,企業戦略への適合性と競争優位性の2つの側面から捉えると,前者が重要になっていることが判明した。なかでも組織適合性,すなわち従業員の意識や行動が企業の経営方針・戦略と合致していることがイノベーションの創出に有効である。 これまで我が国では、イノベーションの担い手は大手企業と考えられてきたことから,担い手としての中小・ベンチャー企業を対象にしたイノベーション研究は緒に就いてばかりである。特に,実証データを活用した研究蓄積が少ないことから,本研究の成果はその意味で大いに貢献できるものと考えられる。また,中小企業を対象とする施策がさまざま検討されてきているが,取組成果の観点から対象企業をセグメント化する必要性が指摘されたことは,今後の施策立案過程での参考材料となろう。
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