平成19年度計画:本研究のテーマのもとで、特に次のものを平成19年度の具体的な課題とした。 課題1.本研究では、外為市場の「状態」とは、外為ディーラーの在庫保有の一覧表により表される。市場はそのような「状態」間を連続時間の中でランダムに推移する。そのような「状態」間の推移確率を表す行列を数値計算により求める。 課題2.外為市揚における取引価格の時間経路の期待値と分散を導出する。 課題3.外為ディーラーたちの予想がばらつくにつれて、取引価格の変動率は大きくなる。だだし、この因果関係は、ばらつき具合を簡単な分布関数で表した場合を除き、解析的に導くことは難しい。そのため、より一般的な分布関数を用いた場合について、シミュレーションにより分布関数の形状が変動率に及ぼす影響を求める。 平成19年度成果: 課題1.上記の推移確率を表す行列のサイズは(ディーラー数+1)の2乗となる。人数に応じて急激に増加する。数学ソフトMathematicaを用いて10人まで、推移確率の時間変化を示すことができた。しかし10人を超えるとそのままのプログラムでは計算できなくため、現在も解決方法を検討中。 課題2.予想のばらつきに一様分布を仮定した場合には、取引価格の分散は中心極限定理により正規分布で近似可能であることを導いた。 課題3.取り扱いができるだけ簡単となる逆関数が存在する分布関数を用いた。10人のディーラーの場合について、シミュレーションを行った。結果は予想通りであったが、だだし、パラメーター値を様々に変化させたシミュレーションの続行が必要である。
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