日本における中長期金利の市場メカニズムを解明するため、世界金融危機時における金利スワップスプレッド(2年物、5年物、10年物)の変動要因を分析した。変動要因には倒産リスク、流動性リスク、イールドカーブの傾き、ボラティリティーを用いた。標本期間全依(06年1月4日から09年8月27日)を金融危機の程に従って4分割した。06年1月4日から07年2月7日標本Aとした。この期間は世界金融危機が始まる直近の1年間である。次いで07年2月8日から07年8月8日を標本Bとした。この期間において、市場は世界金融危機の潜在的なリスクを認識し始めた。次いで07年8月9日から08年9月14日を標本Cとした。この期間においてはBNPパリバ証券の資産運用子会社が運用資産の解約を停止したことで、世界的な金融危機懸念が強まった。最後に08年9月15日から09年8月27日を標本Dとした。この期間は、米投資銀行大手のリーマンブラザーズが破たんしたことで、金融危機懸念がさらに強まった。 倒産リスクについては、標本Bの5年物や標本Cの2年物、5年物、10年物において、プラスの影響があった。言い換えれば、倒産リスクの増加は、金利スワップスプレッドの拡大につながった。一方、標本Dでは10年物において、倒産リスクの増加は金利スワップスプレッドの縮小要因であった。このことはリーマンショック後の金融市場の混乱で、国債市場や金利スワップ市場の価格発見機能が失われたことを示す。流動性リスクについては、標本Bの2年物、5年物、10年物と標本Cと標本Dの2年物において、プラスの影響が測された。イールドカーブの傾きについては、標本Aの10物において、プラスの影響が確認できた。ボラティリティーについては標本Cの2年物と5年物のスプレッドにおいて、プラスの影響が見いだせた。このことは、金融危機が強まるにつれて、日銀の金融政策の先行きに関して不透明感が強まったことが影響していると考えられる。
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