| 研究概要 |
本年度は,本間(2005)及びHomma(2008)において提示された一般化使用者収入モデル(generalized user-revenue model, 以下,GURM)をわが国銀行業に適用し, GURMを実際に推定するための実証モデルの構築に着手した.特に,本間(2005,pp.84-122)において課題として残されていた次の点に対処した実証モデルの構築を試みた.第1に,確率内生的保有収入率(stochastic endogenous holding-revenue rate)及び保有費用率(stochastic endogenous holding-cost rate)の不確実性を示す部分(ζ)のデータの作成.第2に,金融財の確率的オイラー方程式(stochastic Euler equation)におけるリスク調整項(risk-adjustment term)の特定化と推定.第1の課題に対しては次のように対処するものとした.すなわち,今期末(来期首)の実際の保有収入率もしくは保有費用率(H)は今期首の保有収入率もしくは保有費用率の確実な部分(hr)と今期末の不確実な部分(ζ)の合計に等しい(H=hr+ζ)と見なす.さらに,ζの条件付き期待値はゼロであると仮定し,Hの期待値はhrに等しいものとする.その上で,ζをHからHの期待値を差し引いて求める.第2の課題に対しては次のように対処するものとした.すなわち,リスク調整項を定義通りにζと確率的割引因子との条件付き共分散として定式化して確率的オイラー方程式を推定する.その際に問題となるζの条件付き期待値と今期末の準短期利潤の限界効用の条件付き期待値については,外生的状態変数を説明変数とした線形の回帰式の撹乱項のない部分に等しいと仮定し,この回帰式を含めて同時推定する.
[引用文献][1]本間哲志(2005)『わが国銀行業の不確実性動学モデルの構築と一般化市場成果の推定』,科研費成果報告書(課題番号14530107).[2]Homma, T, 2008, "A Generalized User-Revenue Model of Financial Firms under Dynamic Uncertainty Equity Capital, Risk Adjustment, and the Conjectural User-Revenue Model," Working Paper, No. 229, Faculty of Economics, University of Toyama.
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