研究課題/領域番号 |
19530275
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
森 伸宏 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (40190996)
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研究分担者 |
岡村 誠 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (30177084)
コーリン デービス 神戸大学, 経済学研究科, 講師 (70432557)
友田 康信 京都大学, 経済研究所, 研究員 (30437280)
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キーワード | 公的金融機関 / ノンバンク / クールノー競争 / 中小企業 / 借入制約 / 過剰資本 |
研究概要 |
公的金融機関と民間の金融機関の果たすべき役割を明らかにするために、消費者金融市場において民間のノンバンクに加えて、社会的余剰の最大化を目的とする公的金融機関が1社存在するモデルを作成した。これらの金融機関は独占的な資金供給企業から必要な資金を調達し(上流市場)、個人向け貸出市場(下流市場)において、他のノンバンクなどの貸出額を所与として自らの貸出額を決めるクールノー競争をおこなっている。このモデルを使い分析をおこなって得られた結果は以下の通りである。公的金融機関が存在しないケースと比べ、長期均衡では資金供給企業がノンバンクに貸し出す金利は高くなる。これは公的金融機関が下流の市場で積極的な貸出をおこなうために、ノンバンクを含めた上流市場の資金需要が増加するためである。また、公的金融機関の積極的な貸出の結果、消費者に対する貸出総額は多くなり、貸出金利は低くなる。そして、公的金融機関がある場合には、長期均衡において民間ノンバンクが5社以上ならば、民間のノンバンクをさらに1社参入させると社会的余剰は増加することが分かった。 また、銀行とノンバンクの貸出契約の違いが、借り手である独占企業の行動を通じて財市場の経済厚生に与える影響を分析した。銀行は融資の際に担保を要求するがノンバンクは担保を求めない代わりに金利が高い。その結果、自己資金が少なく、借入制約に直面する中小企業が銀行融資を受けようとする場合には、過剰な資本財を使用し、生産効率が損なわれる。一方、この企業がノンバンクを利用した場合には高い金利を負担しても利潤を増加させることが可能だが、そのような企業の行動は限界費用を上昇させ、生産量は減り、価格は上昇し、経済厚生を損なう場合がある。ゆえに銀行が担保を要求する貸出契約は、企業の行動を通じ財市場に非効率性をもたらす場合があることが分かった。
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