民間金融機関(特に預金以外で資金調達する金融機関)の果たすべき役割を調べるために、上流の独占的資金供給企業から資金を調達するノンバンクが下流の消費者金融市場で貸出をおこなうモデルを使い分析をおこなった。長期のクールノー均衡では社会的余剰を最大化する次善の均衡に比べてノンバンク数が少なくなる。そこで次善(second-best)の均衡におけるノンバンク数と自由参入均衡における企業数の差によって均衡における歪み(disto rtion)を評価した。そして、市場が継続的寡占である場合と単一の寡占市場の場合について、市場規模が均衡の歪みにどのような影響を与えるのかを調べた。その結果、市場構造の違い(継続的寡占か否か)により、市場規模が均衡の歪みに与える影響が異なる(継続的寡占の場合には市場規模が大きくなると歪みは小さくなる。単一の寡占市場の場合には逆になる)ことが分かった。 また、昨年に続き、貸出契約の違い(有担保か無担保か)が借り手の企業の行動を通じて生産物市場の経済厚生に与える影響を分析した。今年度は借り手が独占企業の場合から寡占(2社)の場合にモデルを拡張し分析をおこなった。銀行のように貸出に際して担保を要求する場合に比べてノンバンクのように担保を要求しない場合は金利が高くなる。企業は生産設備を担保に低い金利で借りるか、担保を出さずに高い金利で借りるかの選択に直面する。有担保の借入の場合には限界費用を下げることができるが、生産において資本を過剰に使用する傾向がある。このような状況において借り手の企業2社の戦略的な行動の結果、均衡においてさまざまな有担保と無担保の借入契約が起こりうることを明らかにした。
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