わが国の公的年金制度は実質的に賦課方式で運営されているが、この方式の下では、少子高齢化の進展に伴い、若年世代や将来世代に重い負担を背負わせることになる。このため、現在、若者の年金制度に対する不信感が高まっており、その持続可能性が重要な問題となっている。わが国では、2004年に公的年金制度の改革が実施されたが、若者の年金制度に対する不信感が完全には拭い去れていない。さらなる抜本的な年金改革の必要性が明らかになってきている。本稿では、わが国の税制と公的年金制度の特性を取り込んだ世代重複型一般均衡モデルの数値解析を用いて、わが国の公的年金改革の方向性について、2008年から2200年までの移行過程の分析を行った。本稿で得られた主要なシミュレーション結果は、次の3点である。 (1)まず、公的年金制度の改革に関して、基礎年金全額を消費税で賄う改革、さらに、公的年金を基礎年金のみに限定し、それを消費税で賄う改革は、中・長期的に厚生を改善する可能性があることが示唆された。 (2)次に、その財源調達法についても検討を行った結果、比例支出税(消費税)を導入することにより、中・長期的に社会厚生が改善される可能性があることが示唆された。 この結果は、基礎年金の拡大を伴う場合には、年金制度を通じて所得再分配が図られるため、税制度のほうはある程度フラット化しても良いことを示している。 (3)最後に、累進支出税の導入の効果について検討したところ、中・長期的に最も高い社会厚生を達成できる可能性があることが示された。
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