本研究では、教育のオプション価値を明示的にモデルに組み入れて、課税が人的資本投資に与える効果について、シミュレーション分析の手法を用いて定量的な分析を行った。適切な租税システムの構築のためには労働所得に対する課税の効果の理解は不可欠であり、その効果を考える際には人的資本投資に与える影響を考慮に入れることが重要であると考えているが、従来の人的資本投資に関する理論の枠組では説明しきれないことも多い。それに対して、実物オプション・アプローチという新たな視点から課税が人的資本投資に対して与える影響を考慮に入れて労働所得の課税の効果を明らかにしようとした点に本研究の意義があると考えている。なぜ定性的分析だけではなく、シミュレーション分析をする必要があるかといえば、この種の問題においては定性的な分析だけでは様々な可能性を指摘できるものの、さらにもう一歩踏み込んだ明確な結論が出ないことが多く、より意味のある結論を引き出すためには、定量的分析に訴えなければならないことが多いからである。より現実的な政策的インプリケーションを得るために、シミュレーション分析の手法を用いて定量的な分析を行い、労働所得の課税の効果を明らかにしようとした点に本研究の重要性があると考えている。ただ現在のところ、当初の研究実施計画より遅れており、まだ論文を発表できていない状況である。本補助金で購入したソフトウェアとパーソナルコンピュータを用いて引き続き本研究を進行させ、近日中に完成させる予定である。
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