平成20年度においては、海外の地域通貨の実態を調査するために、平成20年9月に米国ニューヨーク州イサカ市を直接訪問し、世界的に有名な「イサカ・アウアー」の発行・管理を担当している事務局から地域通貨の理念、発行・流通の仕組み、地域通貨の実態や問題点などを調査した。こうした海外ヒアリングおよび昨年度の北海道大学の地域通過の研究者、東京の地域通貨発行団体からのヒアリング調査の経験に加え、平成19年度にインターネットを通じて集積しておいた日本全国の地域通貨の発行団体のリストに基づいて、平成20年11月から12月にかけてアンケート調査を実施した。地域通貨発行の理念、具体的な仕組み、発行・管理の問題点、利用者の特徴、支援団体の有無など全国の北海道から沖縄県にいたる112の団体にアンケートを郵送し、このうち53先から回答を得ることが出来た。現在、最近の金融をめぐる問題と併せるかたちで地域経済を活性化させる地域通貨の可能性に関する論文「最近の金融問題と地域通貨の可能性」(仮題)を執筆中である。 また、平成21年2月23日、24日において地域通貨に関する実験を行った。これは、実験経済学の分析手法を取り入れたもので、地域通貨の取引を経験させた場合とさせない場合で、その後の公共財の供給に影響を与えるかどうかを実証したもので、今後の地域経済活性化における地域通貨の役割にひとつの示唆を与えるものと思われる。現在、この実証結果も「地域通貨の使用体験が公共財供給にもたらす影響:経済実験による考察」(仮題)として執筆中である。 さらに、平成21年3月に東北大学で開催された「第18回環境フォーラム:持続可能な社会を実現するための地域の役割」の研究発表とパネル・ディスカッションに二村が参加し、地域通貨が地域活性化に貢献する可能性について講演し、討議にも参加した。これに加えて、貨幣理論に関する書物や地域通貨に関するアンケート調査を行った実績ある論文、実証分析を行った先行研究に関する論文なども入手することができた。
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