全国の地域金融機関はアクションプログラムに従って半年ごとに進捗状況を報告しなければならないことになっている。それによると、金融庁が求めた創業・新事業支援機能に向けた具体的な取組みが徐々に出始めているようである。確かにそれは金融庁による新・旧アクションプログラムの成果の現われのように見える。 だが、そのほかに景気回復効果も無視できない。すなわち、戦後で最も長いいざなぎ景気を超えるほどの景気拡大が続いていることが、地域金融機関に積極的な投融資行動をもたらしたとも解釈できる。むしろ、この影響のほうがリレバン効果や目利き機能よりも大きいと思われる。なぜなら、現実の問題として、リレバン効果はその機能を発揮するのに極めて長い時間を要するうえ、目利き機能は時間の制約を取り払う意味では好ましい考え方であるが、実際に機能するのはさらに難しいからである。 景気回復は目経平均株価の上昇を通して含み益を増大させ、地域金融機関の自己資本比率を高めるので、ある程度、危険な投融資も大胆に実行できる。それと同時に地域金融機関が投融資先企業の将来予想を楽観的に捉え始めることも重要な効果をもたらしている。つまり、景気回復とともに貸倒確率が低くなると予想する地域金融機関が増えたことが、地域金融機関によるベンチャー企業への投融資となって現れていると思われる。 したがって、本研究では簡単な貸出モデルを構築しながら、そうした地域金融機関の投融資行動を分析している。そこから得られる結論は金融庁が唱えるリレバン効果や目利き機能だけでなく、景気回復効果も無視できない要因であり、むしろこの効果のほうが現実的に大きな影響をもたらしているかもしれないということである。もし、そのことが完全に証明されるならば、金融庁によるリレバン政策の有効性に疑問符がつくことになろう。
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