2008年9月に起きたリーマンショックがわが国の地域経済ならびに地域金融機関に及ぼした影響ははかりしれない。平成22年度の研究では世界経済危機の本質を探りながら、そのことがわが国の金融機関や機関投資家ならびに中小企業等にどのような影響を及ぼしたかを詳細に分析した。 まず、最初に米国のサブプライムローンと金融の証券化の仕組みを整理し、世界経済危機の本質を追究した。そこではあまりにも複雑になりすぎた金融の証券化が浸透したために危機が発生したことを明らかにした。大量の有価証券を抱えた世界の金融機関や機関投資家が証券化の仕組みを支えていたが、有価証券の急落から一気に金融システムが不安定なものに転じた姿を分析した。 次に世界経済危機が日本経済に浸透し、わが国の代表な企業も深刻な影響を受けたが、中小企業はさらに甚大な被害を被った。それは金融機関の財務内容が急激に悪化し、中小企業への融資をためらうようになったからである。いわゆる、貸し渋り・貸し剥がし現象である。とりわけ、地域金融機関による中小企業向け融資はその代表であった。政府もその対策として中小企業等金融円滑化法を国会で通し、資金の供給が滞ることを阻止しようとした。本研究ではそうした法律は金融の本来の機能を曲げるものであり、危険であることを指摘している。
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