金融庁が新旧アクションプログラムで訴えたことは、地域金融機関が持つ「目利き能力」を十分に発揮し、創業・新事業といった将来の収益を生み出すと思われる新規分野に向けて積極的に投融資を展開していくことであった。 これにより、地域は活性化され、同時に地域金融機関が抱える一部の不良債権も健全化されるからである。さらに財務力の高まりから地域金融機関は新規分野に向けた投融資を展開する可能性も高まってくる。創業・新事業と地域金融機関の相互作用がうまく噛みあえば、地域経済も地域金融機関も一層発展していくことになる。 だが、アクションプログラムに従って各地域金融機関から報告された取組み状況を具体的に見ていくと、金融庁が描いたプログラムのように展開できていないことがわかる。単純に解釈すれば、地域金融機関が目利き能力を発揮できていないことが金融庁の期待を裏切る結果を招いたように見える。 しかしながら、わが国の地域金融機関は不良債権問題から完全に脱却しているわけではない。そうした状況のもとでは地域金融機関がいくら目利き能力を発揮し、新規産業に向けてリスクを取るように金融庁から指導を受けても、なかなか実行することは難しい。 金融庁のアクションプログラムが当初の計画ほどの成果を生み出していないのは、財務力の脆弱性にあると考えられる。本研究ではそのことを現実と理論をバランスよく組み合わせながら説明し、将来の方向性を示唆するのが目的である。
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