本年度は分析対象を商業用不動産の証券化に拡大し、商業用不動産の評価において重要な役割を果たす収益還元法による評価理論の展開を整理した。最終的な結論付けまでには、さらに検討を進める必要があるが、金利の期間構造のもとでの、割引率やその動きを考えることで、金融機関の審査・融資活動と関連付けたより広範な議論を展開できると考えられる。 これらに加えて、いわゆる「サブ・プライム・ローン」問題に証券化はどのようなかかわりをしているのかの整理を行うとともに、日本金融学会春季全国大会において「証券化」セッションを設定し、中井浩之氏、高橋正彦教授、深浦厚之教授の3氏の報告をもとに、座長として証券化を巡る問題点についてこの分野の研究者の報告・意見交換を行った。 また、昨年度に引き続き、社債市場でのスプレッド分析も並行して進め、証券化商品も含めた格付データ、社債、金利データの入手・整理を進めた。これらのデータをもとに、金利リスクの分析に関しては、イールド・カーブ(利回り曲線)の動きを規定する要因に関して、最新のデータによる主成分分析結果を日本金融学会秋季全国大会で報告することができた。 さらには、証券化の取り組み等について、地域金融機関と全国展開を行なっている大手金融機関との違い、あるいは地域間での違いについての実態を明らかにするため、地方銀行協会へのヒアリングを実施した。さらには、金融機関はもちろんその他の業種に関しても対象に加え、証券化の進展が日常業務にどのような影響を与えているのか状況を探るために、アンケート調査を実施した。
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