本年度は最終年度として、証券化の進展が金融機関の融資・審査の業務への影響、マクロ経済への影響、個々の企業のリスクテイクの変化、などの視点を中心に研究成果を整理してきた。また当初より分析を継続してきた社債市場でのスプレッド分析、金利リスクの分析に関しては、イールド・カーブ(利回り曲線)の動きを規定する要因に関する主成分に加え、証券化進展のもとでのリスク管理において重要な側面と考えられることから、国債利回りとスワップ金利とのスプレッドの影響要因分析、公社債流通市場におけるLIBORスプレッドの計測と影響要因分析も並行して進め、証券化商品も含めた格付データ、社債、金利データの入手・整理はともあわせ今後の研究にも発展できるよう整理した。 証券化の進展に伴う金融危機の影響を、国債利回りとスワップ金利とのスプレッドによる金融リスク測定によって行うという影響要因分析に関しては、大阪大学宮越教授、東北大学佃教授、青山学院大学島田准教授らとの意見交換をふまえながら進め、その研究成果を共同論文として2つの国際学会で報告することができた。 証券化商品、特にいわゆる「仕組債」は、資金運用環境の厳しい日本において、金融機関はもとより、事業法人、財団法人、学校法人など、金融を主たる業務としない組織においても、程度の違いはあるものの資金の運用手段の一つとして広く活用されるようになってきている。しかしながら、こうした商品の商品特性については必ずしも十分な理解がされているものではない。研究のまとめにあたっては、今後の新たな研究の展開の方向性もにらみながら、証券化の進展が生み出したこうした商品が、事業法人等にとってどのような意味を持つのかについても検討し、今後の新たな研究の展開を考えることができた。
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