研究概要 |
本年度はOhlsonの残余収益モデルに関するサーベイを中心に行った。代表的な論文調査に加えて,米国を本拠地とする複数の投資会社における同様のヴァリュエーションモデルの利用実態調査や,研究者へのヒアリング/意見交換等を通じて,モデルの拡張に関するアイディアを発展させることができた。具体的には,株価に織り込まれているリスクプレミアムのリスクファクターへの分解に関して,残余収益モデルの中の割引率を直接マルチファクターモデルで表見する方法を採用し,理論株価と実際の株価の差異がマーケット全体で最小となるようにリスクプレミアムが決まるような最適化問題を解くことで,リスクプレミアム分解を行う方法を考案した。同方法は従来アプリオリに与えていたいくつかの仮定を内生的に決定できるメリットがある。 また,実証分析のために,わが国株式市場の上場企業に関する過去数十年分の株価データおよび財務データを整備した。さらに,IFIS社の提供している証券アナリストの利益予想データを購入し,実績と予想の違いを反映した分析を実行できるための準備を進めている。いずれのデータについても,統計ソフトSASにおいて利用できるよう,リレーショナルデータベースとして開発している。既に試験的な分析プログラムを作成し,残余収益モデルによって個別株式のリスクプレミアムの推定およびリスクファクターへの分解がある程度可能であることを確かめることができた。
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