この研究の目的は、企業の合併・買収が従業員の雇用・賃金と企業の業績に与える影響を分析することである。具体的には、合併・買収が、雇用や賃金に与える影響に注目する。近年、日本においても世界的に見ても合併・買収が増加している。これらに対する関心の高まりを受けて合併・買収が企業の業績に与える影響に関しては、日本でも分析が蓄積されてきているものの、雇用に関する研究は進んでいない。 本年度は前年度に収集したデータを中心にさらにデータを収集・整備を進めた。さらに、雇用の決定に関する実証分析を行う。具体的には、雇用調整関数を推計した。雇用調整関数とは、企業の雇用量決定を分析するモデルである。ある年度における企業の操業状況から、その企業の最適雇用量を考えることができる。企業は、最適雇用量と現実の雇用量の差だけ雇用量を調整する。しかし、雇用調整にはそれ自体費用がかかるため、最適雇用量をすぐに実現できるわけではない。そこで、企業によって雇用調整のスピードが異なることになる。そこで、本年度は、雇用調整関数を計量経済学的手法を用いて実証的に分析した。雇用調整関数に関しては、日本でも先行研究が存在するので、それらの研究を参照にしつつ分析する。雇用調整関数を用いた海外の研究でも、合併後雇用が減少しているという結果が幅広く観察されている。仮説が正しいのであれば、合併・買収後に雇用が削減されるであろう。計測の結果、合併後にこようが削減されるという事実を確認することができた。
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