本研究の目的は、地方住民税による再分配効果が国税と比較してどの程度なのかを明らかにするとともに、その再分配効果が所得階層別・種類別にどのように異なっているのかを、主としてタイル尺度に基づいて要因分解して検証しようとするものである。 平成19年度の研究実施内容は以下の通りである。 (1)我が国申告所得税の再分配効果を所得者別・所得階層別の要因分解により検証した。所得階層別の分析においては、所得税の再分配効果を税率効果と控除効果に分解し、その相対的な大きさを定量的に把握した。 (2)1969年から2005年の36年間について、総務省自治税務局市町村税課「課税標準額段階別所得割等に関する調」の税務データを利用して、個人住民税における所得階層別・種類別の再分配効果の実態とその変遷を明らかにした。 (3)「三位一体改革」によって実現した、地方政府への3兆円の税源移譲とそれに伴う地方住民税の税率フラット化による所得階層別の負担配分および再分配効果の変化について検証した。 その結果、以下の諸点が明らかになった。 (1)申告所得税における全体の再分配効果は、分析対象期間において低下傾向を示すなかで、1969年〜1975年および1987年から1991年における再分配効果は急激な変動を伴い、また1999年における再分配効果は急上昇する。 (2)同様の再分配効果の変遷は、おおよそ個人住民税においても認められる。 (3)「三位一体改革」の結果としては、個人住民税の税率効果は消滅し、全体の再分配効果はほぼ控除効果で説明される。 [研究協力者] 深江敬志(青山学院大学経済学部非常勤講師) 平成19年度の研究において、個人住民税の税務データ等の収集・整理とこれらのデータ解析を行った。
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