本研究の目的は、「三位一体改革」において平成19年度から地方住民税の税率が10%の比例税率にフラット化されたことから、地方住民税の再分配効果が、国税と比較してどのように変化するかを明らかにするとともに、その再分配効果が所得階層別・種類別にどのように異なるのかを、主としてタイル尺度に基づいて要因分解して検証しようとするものである。 平成20年度の研究実施内容は以下の通りである。 (1)総務省自治税務局市町村税課から提供供された2007年度(平成19年度)の地方住民税データを利用して、「三位一体改革」の地方住民税の税率フラット化による税収予測の実証研究を行うとともに、税率10%フラット化の再分配効果を検証した。 (2)タイル尺度による要因分解によって、所得控除効果と税率効果に区分し、とのように再分配効果が変わったのかを明らかにし、この二つの効果がどの所得階層にどのような影響を及ぼすのかについても検証した。 (3)地方税関する分析も、引き続き連研究として行った。 その結果、以下の諸点が明らかになった。 (1)「三位一体改革」の地方住民税のフラット化による税収予測から、市町村民税において0.4%〜0.7%、都道府県民税において1.7%〜1.8%、地方住民税全体では2.2%〜2.5%の増収効果をもたらすと予測された。同時に、地方住民税による再分配効果は、低下することが検証された。 (2)タイル尺度による要因分解から、地方住民税の再分配効果の低下は、主として税率効果の低下によってもたらされることが検証された。また、その税率効果の低下は、市町村民税の税率効果の低下を主要因とすることも明らかとなった。さらに、所得階層別の影響として、中所得階層(下)および中所得階層(中)の間で起こり、課税標準120万円以下の層には再分配効果を上昇させ、120万円以上の層では効果を低下させることが検証された。 [研究協力者] 深江敬志(青山学院大学経済学部非常勤講師) 平成19年度の研究において、個人住民税の税務データ等の収集・整理とデータ解析を行った。
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