将来の急速な高齢化社会到来を念頭に置いて、我が国に於ける女性労働拡大の経済成長にあたえる影響を、動学的一般均衡モデルを用いてシミュレーション分析の手法で体系的に分析した。 今までの我々の研究で明らかなように、将来推計人ロならびに将来労働人口の減少から、将来の経済成長は大きく低下することが避けられない。そこでその解決策として考えられるのが、外国人労働の吸収と、女性の労働市場への参入を奨励する方策である。当該研究では特に後者の効果について焦点を当て、女性労働拡大が将来的にどれほど経済成長に影響を与えるかについてシミュレーション分析を行った。女性の労働市場への参入はそれを今まで阻止してきた様々な理由が考えられる。たとえば、育児の問題、老人介護など、女性が行ってきている様々な行動に影響を与える経済政策を考慮しなければならない。すなわち、女性が労働市場に参入できるような経済政策の効果分析でもある。当該研究はこのような政策をも同時に考慮し、そのような政策拡大に伴う支出増と一方でそのような政策のプラスの効果として期待される女性労働のマクロレベルで見た拡大効果を同時に一般均衡分析の枠組みの中で分析を行った。そこでは女性労働の供給関数を推定し、既に行われてきている人ロ統計データを男女に分ける操作を行った。さらに、女性労働の供給関数の推定を通してシミュレーション分析に重要なパラメータのカリブレーションを行った。具体的には今まで男女の区別なく扱われてきた効用関数を男女別に分け、それぞれの主体的最適化行動の結果として集計化された消費と労働を定義し直した。詳細なシミュレーション結果は近日中に発表される論文に示される予定であるが、女性労働の拡大は男女間の雇用機会均等など社会的な問題としてのみではなく、経済的に考察しても将来の経済成長にプラスに働くという意味において、重要な要素であることが示された。
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