研究概要 |
高齢化社会の到来の中,労働人口の減少に伴って女性労働拡大の必要性が高まっている中、女性労働の労働供給曲線の正確な測定は、動学的一般均衡モデルを用いたシミュレーション分析を行う上で非常に重要である。これは我々の研究で明らかにされた点である.当該年度ではこのような研究方向の中,我々は家計経済研究所による消費生活に関するパネル調査を用い、既婚女性の労働供給曲線を推定した.女性労働の推定に関しては,女性が労働参加するかしないかに関するセレクションバイアス及び賃金率の内生性が重要な問題として考えられてきたが,当該研究ではこの二つのタイプのセレクションバイアス、及び賃金の内生性によるバイアスを同時に取り除く形での労働供給の推定を行ったまず, Heterogeneity termが存在しないと仮定したモデルでは、OLS及びロジット推定と同じ結果になる.この場合,労働供給量の賃金弾力性は-0.635であり統計的に有意な値となっている.つまり、賃金が1%上昇した際労働供給量が約0.6%落ちるということになる.次にheterogeneity termお取り入れたモデルを推定した.このモデルは労働参加におけるセレクションバイアス及び賃金率の内生性を同時に取り除いたモデルになる.まず各誤差項の相関を表すρであるが、すべての推定方程式においてポジティブになっている.これは、簡単にいえば、賃金が大きくなるようなUnobserved heterogeneityを持っている女性は、労働時間も長くなる傾向を持っており、また労働参加率が高くなるようなUnobserved heterogeneityを持っている女性は労働時間も長くなる傾向にあることを示している.これからも想像できるがこのようなUnobserved heterogeneityを無視すると賃金弾力性に上方のバイアスがかかる.実際、推定された賃金弾力性を見てみると更にネガティブになっていることが分かる.
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