研究概要 |
本研究は、ドイツを代表する大企業の個別事例研究を通じ、ホワイトカラーと呼ばれる職員層、とりわけ大企業内の職員層が歴史的にどのように形成されてきたかについて、特に学校・学歴と職種・キャリアとの関係に注目した分析を行った.商業系・技術系の職員層、管理職・経営者層、女子職員層の三つのルートに着目し、対象とする次期を第一次大戦前後から第二次大戦後までにしぼり、二つのドイツ大企業をとりあげて具体的な事例研究を行った.一つは第一次大戦までドイツ最大のコンツェルンであったフリードリヒ・クルップ社、もう一つは現在のドイツ最大企業であるダイムラー社であり、これら企業の研究史および企業文書館に所蔵されている1840年代から1960年代までの資料、また関連する公立文書館資料についての分析を行った. その中で、ホワイトカラーの受けてきた教育や職業教育制度が、技能労働者の制度を引き継ぎつつ、現場での研修と学校での理論的教育とが積み重なる形として形成されてきたこと、また取締役をはじめとするマネジメント層においては予想以上に内部昇進が多く,企業と社会、特に大学・研究機関との連携も強かったこと、女子職員の場合は職業教育の義務化が遅れたが、1920年代の義務化の後に一気に広がったことなどが明らかになった. これらの成果については、四年前から進んでいるホワイトカラー国際比較研究会での報告、2008年10月の経営史学会での報告を行い、特に取締役・経営者というトップ・マネジメントの学歴・企業内キャリアについて実証報告を行った.また、『ドイツ近現代ジェンダー史研究』(青木書店、2009年)の中に、「女子商業教育とOLの誕生」として、商業職業教育の発展との関連性を重視しつつ、女性のホワイトカラーの生成についての論文を発表した.
|