(1)陸海軍の各研究機関の動向、(2)第1次世界大戦期から太平洋戦争期における各時期の特徴、(3)陸海軍における研究開発活動の担い手であった技術系文官・武菅の供給状況、(4)陸海軍における研究開発と民間企業の関係の4点の解明を目的とする本研究では、本年度はとくに防衛省防衛研究所図書館および国立昭和館での関連資料の収集に力点を置いた。 『大日記』系列や『公文備考』といった基本資料の中から陸海軍試験研究機関に関する情報を抽出し、それを整理する作業を継続した。また国立昭和館にも海軍関係資料を中心に個人寄贈資料も含めて多くの重要な資料が保存されており、その資料群の中から研究開発活動に関わる資料を整理することも今後の課題の一つである。 特定の研究機関としては海軍技術研究所を取り上げ、同所関連の資料を集中的に収集した。とくに1923年の創立から日中戦争開始までの戦前期の海軍技術研究所に関する資料を数多く収集し得たことは大きな成果であり、科学研究部(理学・化学研究部)、電気研究部、造船研究部、航空研究部の各部の研究開発活動の実態を明らかにすることができた。なかでも電気研究部に関する資料は豊富であり、同部と民間企業や大学との共同研究についても検討することができた。陸海軍試験研究機関における研究開発活動に関しては、用兵側の意向が大きく影響を与え、その内容によって研究開発の方向性が規定される実態が明らかとなった。また造船研究部も大学や学協会、大学との関係が深く、軍事研究と商船建造の関係の実態を検討する必要がある。
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