本年度の研究は、まず流通・物流機構の整備問題を扱う前提として、前年度に引き続いて戦時統制経済の根幹部分である物資動員計画の解明に力を注いだ。300程度の主要物資について国内供給の見通し、国内需要の査定と割当を行い、需給の安定を図り、不足部分は消費節約と配給統制によって適正処理するという計画が、必然的に国内経済、流通機構に全面統制をもたらすプロセスを詳細に解明した。さらにこの素材部門の需給計画を基に、厖大な消費財産業の需給統制が展開することを解明した。このうち1941年度、42年度については2本の論文にまとめた。 次いで、戦時総動員体制を支えた資金面を研究し、戦時金融金庫が最もリスクの高い領域の投融資を担当して、金融市場の安定性を確保していたことを解明した。このうちの総括的部分は2本の論文にまとめ、軍需産業や、物流の最重要課題となった機帆船海運業、その機帆船を供給した中小の木造船業の増強政策と具体的な投融資活動については、2009年度中に単著として刊行を予定している。 第三に、戦後の物流機構整備の重要課題の一つとなる基礎素材部門の需給調整問題を解明した。1950・60年代における投資調整、生産調整を、化学繊維工業や石油化学産業を素材に解明した成果は、2009年度中に共著の刊行を予定している。
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