前年度に引き続き申請者が刊行してきた経済総動員関係資料等を利用して、統制経済の根幹である物資動員計画の解明、とりわけ太平洋戦争勃発以後、敗戦までの物資動員計画の推移を追い、市場管理システムの全体経過を明らかにする作業を進めた。 このうち、沿岸海鳴輸送を担った機帆船運航会社や木造船建造能力の増強については、戦時金融機関による経済総動員支援事業の一環としてまとめ、研究書を刊行した。 このほか、1943年度以降の海上輸送力の推移と物資動員計画の策定経緯について、分析作業を進めた。 配給機関の分析では、神奈川県繊維配給株式会社の戦時・戦後配給について、各種帳簿類、事業報告書、月報類、販売統制計画と実績、出荷指図書などをもとに、生活困窮者、特に引き揚げ者への冬物緊急配給などの実態を検討した。戦時期の配給機構の整備は、産業組織の最適規模、企業間取引の最適方法の模索として捉えることが可能であり、戦後高度成長期以降の産業合理化政策の中でも、しばしば流通合理化が政策課題とされた。このことを踏まえて、高度成長から現代にいたる物流機構の合理化政策についても検討を進め、戦時動員としての流通合理化政策の成果が、部分的にでも戦後流通機構に継承されたものが少なくないことを、実証できる段階まで作業を進めた。
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