本研究では戦時統制経済下で推進された流通機構の整備・合理化政策の実態を、流通政策はもとより統制会社の経営一次資料を駆使して解明する。 戦前から戦時動員体制へ、戦時動員から戦後統制へ、戦後統制から市場経済復帰という大きなシステムの転換の中で、流通機構や物流機構がその都度「合理的再編」の目的に沿って、どのように変容して今日に至るのか、その全体像を解明する作業は研究史上の積み残しになっている。具体的には、戦時鉱工業動員の結果、人的物的資源と資金面から組織的再編が進んだこと、さまざまな消費財産業で企業組織化と低生産性企業の整理が進み、流通部門では、集荷問屋・元売問屋・集散地問屋・卸売問屋・小売商や、その組織が整理され、そのシステムが簡素化されたこと、そして、占領下の戦後統制では、中央集権的一元的統制を排除されたものの、統合され簡素化された問屋網は維持され、需給調整に利用され、市場経済復帰後も再び流通機構の集約が課題とされていくなどが課題となる。
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