本年度は、ヨーロッパの南東欧拡大と第三帝国の南東欧拡大の歴史的位相の差を確認するため、ルーマニアのブカレスト大学のムルジェスク教授との交流を深めた。同教授は、南東欧史研究のルーマニアにおける代表的研究者で、バルカン諸国の融和の上にEU統合を実現するために、バルカン諸国の歴史研究者の相互協力で中高生向けの歴史教科書を編集執筆しており、その成果をもとに、きわめて冷静で温和な歴史理解のもとに、両大戦間期のドイツの南東欧進出・膨張の意味を解きほぐしていた。EU統合・その拡大の平和的実現の今日的到達点に立つからこそ、見えてくる歴史理解であった。 彼とは、ウィーン大学現代史研究所のカローラ・ザクセ教授が率いる大型歴史研究プロジェクトのシンポジウムで知己を得たが、ムルジェスク教授をはじめとするバルカン諸国の歴史研究者と集めた国際的研究集団を組織できることこそは、EU統合の到達点を示すものと、理解できた。
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