本研究の目的は、1900年頃から1960年代を対象に日本における銀行家・銀行経営者の経営観(銀行観)と経営行動の歴史的変転について、多くのケーススタディに基づいた全体的構図を提示することにある。分析にあたっては次の3点を重視する。(1)経営環境としての法制・行政ならびに経済・金融構造に対する銀行家(経営者)の経営観の独自性。(2)銀行事業における銀行家自身の立身出世意欲(私益)。(3)東アジアにおける日本の銀行家の異同性。 平成19年度においては、国会図書館憲政資料室(近代諸家文書)、全国地方銀行協会、早稲田大学図書館等々での文献・資料の閲覧を行い、伝記資料の収集に努めた。また次の海外出張を行い、各都市において関係研究者との意見交換や資料収集を行った。8月12日〜20日:中国・深セン、広州、香港。8月24日〜27日:韓国・ソウル。平成20年2月20日〜25日:中国・ハルビン、藩陽、大連。同時にこれら収集資料類の分析を進め、次年度における研究の展開を準備した。その分析成果の一部については、『日本金融史を生きた人々』(仮題)(共著、麗澤大学出版会)に吸収し、平成20年度に刊行を予定している。なお、麗澤大学公開講座(8月4日)での講演「立身出世と日本」のほか、静岡市「立身出世と日本の経済人」(8月2日)、奈良市「事業の継承と永続」(平成20年2月16日)大阪市「立身出世と日本の経済人」(2月18日)における講演においても研究成果の一部を取り入れ、社会的還元に務めた。
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