本研究の目的は、1900年頃から1960年代を対象に日本における銀行家・銀行経営者の経営観(銀行観)と経営行動の歴史的変転について、多くのケーススタディに基づいた全体的構図を提示することにある。分析にあたっては次の3点を重視する。(1)経営環境としての法制・行政ならびに経済・金融構造に対する銀行家(経営者)の経営観の独自性。(2)銀行事業における銀行家自身の立身出世意欲(私益)。(3)東アジアにおける日本の銀行家の異同性。 平成20年度においては、国会図書館憲政資料室(近代諸家文書)、全国地方銀行協会、早稲田大学図書館、東京大学経済学部図書館、福井県立文書館等での文献・資料の閲覧を行い、伝記資料の収集に努めた。また次の海外出張を行い、各都市において関係研究者との意見交換や資料収集を行った。平成20年10月2日〜8日:中国・北京。10月18日〜20日:中華民国・台北。平成20年11月8日〜10日:中国・大連。同時にこれら収集資料類の分析を進め、研究成果のとりまとめに努めた。その分析成果の一部については、『日本金融史を生きた人々』(仮題)(共著、麗澤大学出版会)に吸収し、平成21年度に刊行を予定している。なお、地方金融史研究会報告「市橋保治郎と福井銀行」(平成20年12月26日)のほか、横浜市「立身出世と道経一体経営」(平成20年6月18日)、東京都「ファミリービジネス論の地平」(平成20年6月21日)名古屋市「立身出世と道経一体経営」(11月26日)における講演においても研究成果の一部を取り入れ、社会的還元に務めた。また日本金融学会2009年度春季大会(5月16日、東京大学)においてパネルディスカッション「危機と革新の金融史-1920年代、30年代の日本」を組織し、そこで「銀行経営の変容」を報告する予定である。
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