本研究の目的は、近代日本の成立・確立期(1890年代〜1920-30年代年代)を対象に、生活に不可欠な消費資料である主食に注目し、産業化に伴い高度化する消費が市場を通じて与える多様な影響を、社会史的・地或史的に検討することにある。特に、(a)主食の需要構造の特質と変貌、(b)主食の取引圏の拡大、(c)国内産地の対応、について実証的に解明し、それらを総合的に考察することを課題とする。本年度(初年度)は、まず、撮影による資料収集が多量にあるためデジタルカメラを、また収集資料の整理・保存、データの分析など本研究全般に使用するためノート型パソコンを購入した(物品費)。資料調査については、(a)国内の主食需要の動向について、各大学図書館が所蔵する調査資料、雑誌類、製粉会社社史等を調査収集するほか、阪神市場での取引の実情を刊行資料や新聞記事等により調査し、(b)北米小麦・小麦粉需要増加に伴う取引圏の拡大について、アメリカ合衆国の国立公文書館(ワシントンD.C.郊外)所蔵のレコードグループ131に収められている、1920-30年代の三井物産・三菱商事の小麦・小麦粉取引関係書類を調査し、(c)国内の米の遠隔産地の市場への対応、産米改良について秋田県庁文書を、関東近県(茨城県・栃木県)の米産地の産米改良と酒造米流通について当該時期の刊行資料、醸造家の所蔵文書等を調査収集した(旅費)。収集資料の整理・保存にはアルバイトを使用して、数値データの入力、文字資料の解読・入力、収集資料のリスト作成、一部収集資料のPDFファイル化等を進めた(謝金)。研究成果の一部を論文にまとめた。
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