1. 日本の上場企業1325社についての2002年から2006年までの財務および株価データに基づいて、その資本構成を説明するペッキング・オーダー理論に関する実証研究を行った。今回の研究では、内部資金が不足する場合と余剰資金がある場合とに分け、対称ではないことを示した。また、企業規模により、ペッキング・オーダー理論の説明力が異なる理由の説明も示すことができた。 2. 中国企業の株式所有構造と企業のパフォーマンスとの関係を、上海証券市場に上場している企業を対象として実証分析を行った。株主を政府(国家株)、長期投資をする戦略投資家、および小規模な投機的投資家(個人投資家)の3つに分け、これらの投資家の持ち株比率と総資産利益率およびトービンのqとの関係を調べた。国家株は総資産利益率を線形関係はなかった。戦略的投資家株は総資産利益率と正の関係、投機的投資家株は負の関係を示した。最後に、トービンのqと国家株比率に関して、非線形の関係があることを示した。国家株比率が0%から18%まではトービンのqが上昇し、18%から55%までは下落、55%を超えると上昇するという興味深い結果を得た。 3. 中国企業のリターン決定要因に関する実証分析を行った。2000年から2008年までの8年間にわたり、上海証券取引所上場企業を対象として、どのような要因がリターン(長期間の平均収益率)の大小に影響を与えるかを分析した。結論として、ベータが大きいほどリターンが小さく「資本資産評価モデル(CAPM)」とは逆の結果が得られた。われわれの分析では過去に大きな株価上昇があった株式ほど過大評価されて、その後のリターンが小さいという結果が得られた。この分析からいえることは、中国株式市場においては投資家が合理的な投資行動を採っていない、ということである。
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