本研究の目的は、日本企業の海外事業展開により国際的に分散化した在外子会社の統括において、企業内国際分業の編成と現地サプライヤーの両方がどのように影響しているのかを明らかにすることによって、多国籍企業内部のネットワークと焦点組織(海外子会社)の有する外部ネットワークにおけるポジションの変化について明らかにすることである。特に、本年度の研究では、最終消費財企業ではなく、日本産業の競争力の源泉となっている部品サプライヤーに焦点を当てている。海外子会社統括の問題点を明らかにし、その解決を図ることは、学術的な側面のみならす実務上にも大きな意義がある。特に、消費財と異なり、供給先企業との関係やコスト競争から海外展開を余儀なくされる場合が多く、また、国際経営の経験が少ない企業も多い。日本企業の国際経営については、欧米企業に比べ、日本人管理者の本社からの派遣による直接的コントロールを主体としているという特殊性が存在し、海外の人材活用の面では問題点も指摘されている。今回は、社団法人日本自動車部品工業会に会員登録している部品サプライヤー450社に郵送による質問票調査を行い、日本本社事業部と海外子会社との関係(統括方法)と現地におけるビジネス関係がどのように影響するのかを探っている。現在、回収した回答を入力しており、今後データの解析とその検討を行う予定である。今回の調査により、本社による海外子会社の有効な統括方法と海外子会社における現地ビジネス環境への適応化の両立の可能性を探ることは大きな意義がある。
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