当初予定していた平成20年度のアンケート調査は、金融危機のため、現地企業の対応が難しくなり、平成21年度に実施することに変更した。繰越された資金を利用して、上海社会科学院の王振教授の協力を得て、上海の研究開発者にアンケートを配布し、調査を実施した。計236部の回答が得られた。現在、以前行ったアンケート調査のデータを合わせて、解析して論文にまとめているところである。 現段階では、アンケート調査の結果から暫定的に次の結論が得られている。まず、多くの技術者は様々な研究開発の仕事に携わっている経験があるものの、重要な研究開発プロジェクトに関わった技術者は非常に少ない。研究開発活動は研究開発部門の一部の技術者に限定して行なわれていることが考えられる。この意味で、中国では、企業の研究開発活動は非常に分業化されていることも考えられている。 そして、技術者達は将来自分の専門分野を活かして、技術の道を極めることより、むしろ技術も管理もできる仕事を望んでいる。技術開発はますます重要となっている中国企業にとって今後技術者を研究開発の専門分野で活躍させるためには、彼らにとって魅力のあるキャリア・パスを提供しなければならないだろう。 また多くの技術者は企業に対して強い忠誠心や責任感を持っており、企業のために自分の力を尽くしたがっている。そして、企業全体の成長、企業内のチームワーク重視、安定的な仕事の環境の確保は多くの技術者が描いている企業の理想像である。
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