本年度は、企業の社会的責任について環境マネジメントの視点から研究を行った。具体的には、独自に「環境マネジメントのフレームワーク」作成した。このフレームワークは、(1)環境マネジメントの誘因(企業外部と内部の制度圧力)、(2)環境戦略(能動性・受動性)、(3)企業パフォーマンス(環境・財務)、そして(4)環境戦略と企業パフォーマンスを関係づけるリンキング・メカニズムによって構成されている。「環境マネジメントの誘因」とは、企業に対して環境経営を促す要因、つまり環境経営への圧力のことである。「環境戦略」とは、環境マネジメントに特有の企業行動や意思決定、「企業パフォーマンス」とは企業の環境戦略の結果であり、本研究では環境パフォーマンスと財務パフォーマンスに区分した。そして「リンキング・メカニズム」とは、環境マネジメントを企業パフォーマンスに導く企業内部の特有な資源や能力と定義している。このリンキング・メカニズムは、環境戦略とパフォーマンスの間にあるダイナミックな相互作用と見なされる。そして本研究では、「企業を環境経営に導く誘因は何か」、「なぜ企業の環境戦略には違いがあるのか」、「環境戦略はどのようなメカニズムによって企業パフォーマンスを向上させるのか」などに注目した。以上のフレームワークに基づいて、小売業のイオン(株)を事例として分析を行った。その結果、環境マネジメントの誘因について、企業内部の要因として経営者の環境経営の解釈、企業外部の要因として小売業を取り巻く環境規制があること、イメージ向上のための差別化環境戦略を採用していること、そして同社の環境マネジメントは社会に高く評価されており、企業のイメージアップにつながっている。その理由として、経営資源の柔軟性、利害関係者との統合能力、持続的イノベーション能力など、リンキング・メカニズムに優れていることを導いた。
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