本研究の焦点は、寓話「裸の王様」の宮廷で作動していた「スムーズな流れ」である。「裸の王様」は、職務と役割が連鎖し、その連鎖が悲劇的な結果に導くというスムーズな流れのシナリオを具体的に示したものである。筆者は、日本のIT 企業のイラストレイティブ・ケース・スタディーを用い、このようなスムーズな流れの特性を探求し、概念化した。IT企業で働く社員への「深い」インタビュー調査を通じ、質的データを採取した。日本のIT企業の職場では、オートポイエーシスの特性である構造的カップリングの「亜種」がスムーズな流れを生んでいた。この種のスムーズな流れのため、数えきれない人材と数億円を投じたプロジェクトが失敗し、会社自体も損失を負っていた。
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