研究課題
本研究は、現代日本映画産業における全体的な製作提携の構造と業績の関連について、2000年代の製作委員会のネットワーク分析を通じて明らかにすることを目的とする。映像コンテンツの制作に際し、製作委員会と呼ばれる時限ネットワーク組織を分析の対象とする。製作委員会には、多様な企業が自社の事業利用を目的として参画する。これらの企業群は従来の映画産業にない独特な製作手法や著作権ビジネスのスキーム等のノウハウを持ち込み、日本の映画産業の復興に大きく寄与した。近年では、アニメーション映画の製作経験を蓄積してきた出版社の影響力が増しつつある。2000年代の日本映画の製作事業開発提携において、企業の持つ企業間ネットワークの構造形態、関係特性と、関与した映画の平均的な業績の関連を見てみると、凝集的な紐帯に一定の効果が見られた。これは、日本映画の製作委員会の現状について紹介したところで示したように、常時、一定の企業と凝集的なクラスターを形成してそこで製作をしている企業の方が、そこで映画製作に関わるソフトな資源を相互利用できるとともに複数のメディアを用いて集中的な映画宣伝を行うことができるように活用型の学習を進めているので、業績の高さが期待できた。つまり映画製作に関する文脈に依存した知識とルーチンを共有している企業の業績が高い傾向が見えた。支援企業は、大手商社、IT企業、芸能事務所などがあり、自分の保有する事業資源(小売網、デジタルメディア技術、タレントなど)を活かす途を探るために、幅広く流通メディア企業、製作企業に関与する傾向が見られた。ネットワークにおける提携組織能力(Alliance capability)の観点を導入すると、こうした結果からある種の経営管理上の含意を得られるだろう
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Working Paper, Institute of Economic Research, Kagawa University, 2008年7月 No. 135
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