ハーバード・ビジネス・スクールにおいてMBAを取得した日本人学生が、卒業後10-15年の間にいかなるビジネス上のキャリアを過ごしてきたか、同校のMBA教育は本当に彼らの現実のビジネスにおいて有効であったかどうかについて、1994年度の日本人卒業生約20名の現在に至る歩みを個別に調査し、MBA教育のキャリア形成に対する影響のうち、 (1)ケース・メソッドを中心とした同校のMBA教育の有効性 (2)MBAを取得することの意義 (3)現実のビジネスにおけるMBA教育で得られた知識や技術の有効性 (4)個々人の人生における具体的影響 (5)既存のMBA教育に欠如し、ビジネス教育で本当に必要なものは何か、 等を実証的に明らかにしようと意図したものである。 今年度は10名についてヒアリング調査を実施した。これらを通じ、個々人の人生観だけでなく様々な示唆に富んだ助言が得られた。 ・「1を千にするような仕事よりも、マイナスをゼロに、あるいはゼロを1にするような仕事、そして、組織や人をインスパイヤするような仕事をしたい。」 ・「一言で言えば、人の気持ちがわかること。相手が不快に思わないような仕事をしていきたい。」 ・「最も、競争の激しい環境に自分を置いて、そこで生き残ってこそ…」 ・「ハーバードの卒業生だから、こうでなければならないという下手なプライドで自分自身を縛ってしまうことの方が、人生にはネガティブに作用する。」 ・「人・自然・社会、これら全てを自分でコントロールできると思っているアングロ・サクソン的な生き方は、極めて傲慢だと思いませんか?」 15人中3名は実名の公表を辞退、1名はインタビュー内容の活字化も辞退している。それでも、かつての同級生達は、全員が真摯にインタビューに応じてくれ、様々な思いを語ってくれた。企業人だけでなく、今後MBAを目指す若者にとっても参考になるべき視点が多い。
|