研究概要 |
本年度は多角化企業の動向,組織構造と経営成果の関係について,分析を行った。調査の結果,次のことが明らかになった。 多角化企業の組織構造としては,事業部制組織が一般的だが,日本においては職能別組織も依然として重要な位置を占めいていることが明らかとなった。また日本的な混合型組織構造も多くみられ,国による多様性も確認された。組織は戦略に従うというChandler(1962)の命題は支持されるが,組織構造は戦略だけではなく,外部環境の変化に対応して変化することも明らかとなった。これらの結果は組織構造の普遍的な変化ではなく,組織変化の多様性を示している。組織変化は,国によって異なったパターンを示すことが明らかとなった。 経営戦略と組織構造の日英比較では,イギリス企業日本企業に比べて,より分権的な組織構造であることが明らかとなった。日本企業には職能別組織も多く,事業部制組織であっても分権化の程度は低かった。戦略を見ると,イギリスの企業は日本企業よりも積極的に新規事業へ進出を行い,その進出先が日英で異なっていた。イギリス企業は市場関連型多角化を重視するのに対し,日本企業は技術関連型多角化を重視していた。しかしながら,近年は,日本企業も市場関連型へと移行している。これらの違いが生まれる両国の企業の発展プロセスの分析が今後必要である。多角化戦略と経営成果の分析では,既存主力事業を強化しながら事業数を拡大する「コア多角化型」が好業績であること,逆に既存主力事業への投資を縮小しながら多角化を展開する企業が低業績であることが明らかとなった。
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