本年度は本課題の2年目にあたるため、前年度に収集された文献資料から、創造性の概念について、理論的なフレームワークを作成することをまず目指した。分析の結果、創造性を新奇性と有用性と捉えることが、ビジネスにおける創造性測定の基礎となることを確認した。また、従来の研究では、ビジネスフィールドにおける創造性に関する研究が少ないことも明らかになったので、前年度に収集された経営者インタビューから得られた言及を文字データとして、取り込み、テキストデータを処理できるMaxQDAなどの定性的データ分析ツールを活用して、ビジネスにおける創造性の特徴を明らかにする作業を行った。この分析結果と先行研究から、ビジネスにおける創造性を捉えるアプローチとして、パーソナリティ、能力などの4つの観点から捉えることが合理的であるという結論に至った。さらに、以上で提示された理論的フレームワークに基づき、創造性測定のための尺度候補を作成することを行った。その際、前年度に収集した資料を基に、組織行動論、人的資源管理論、社会心理学、発達心理学といった諸研究の蓄積から様々な概念を援用した。 一方、本年度は、海外の学会に参加することで、諸外国で創造性に関する研究がどのように行われているかについて最先端の知見を得ることができた。現時点では創造性の測定に関しては、1970年代に開発されてTTCTがもっとも頻繁に採用されている尺度であることも確認できた。以上のような文献研究、学会参加で得た知見に基づきパイロット調査票を作成した。次年度以降にはこの調査票を活用し、実証データの収集にあたる予定である。
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