情報が多様化かつ増大した情報社会の現代において、創造性は、全ての現代人にあまねく求められている資質である。しかし、これまで国内外での創造性の測定に関する理論的蓄積は、少ないのが現状である。とくに、我が国においては、ビジネスにおける創造性を測定するという観点からは不十分である。したがって、本研究は、ビジネスにおける創造性はどのように定義され、どのような尺度で測定可能であるかを、実証的に分析することを目的として行われた。本年度は、調査全体の最終年度にあたり、前年度の収集したデータの詳細分析とその後の二次調査の実施および分析である。加えて、調査分析結果をまとめた。以上の研究目的および研究課題を踏まえて、以下のような点が明らかになった。 1. 我が国における創造性研究は、トーランステストに代表される拡散的思考能力測定に焦点が当てられ、ビジネスにおける創造性を測定する試みはほとんど行われていないことが明らかになった。加えて、創造性の測定を客観的に行うには、対象者と身近に接している上司が共通の評価軸に基づき測定することが適切であることが明らかになった。同時に、上司によって測定された創造性は、人事考課結果とも優位な相関を持つことが示され、我が国のビジネスフィールドにおいても、創造性の有効性が明らかになった。 2. 創造性に影響を与えると考えられる規定要因を取り上げるに当たり、個々の変数を取り上げることよりも、パーソナリティ要因、思考能要因、認知要因、そして環境要因などを複合的に包括する分析モデルを構築することが有益であると示唆が得られた。 3. 従来の研究では、特に内発的モチベーションが過度に強調されてきたが、一定の条件のもとでは、外発的モチベーションも創造性に資する場合があること、仕事の忙しさといったマイナスの環境要因が創造性を阻害することなどが明らかになった。
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