近年、コア事業に経営資源を集中させ、本業重視のキャッシュフロー経営へと転換する企業が数多くみられる。本研究は、拡大志向の経営から高付加価値経営へと転換するために、事業構造、組織構造を組みかえる過程を「組織能力の再構築」として捉え、そのために必要な組織能力を明らかにすることが目的である。 平成19年度は、組織能力に関する文献研究からはじめ、停滞傾向の企業を組織能力の再構築によって復活する過程をいかに測定するか、について検討した。具体的には、建設業界の不況による業績低下から驚異的な復活を果たしたコマツを事例として、本社、主力工場、系列部品会社を訪問して詳細なインタビュー調査を実施した。また、北京にあるキューピー、ゼロの合弁会社を訪問し、日本企業と中国企業との組織能力の相違に関するインタビュー調査を試みた。当初の研究計画として、1.組織能力に関する文献サーベイ、2.組織能力の分類による組織能力の比較研究、3.中国、韓国企業の組織能力研究、4.インタビュー調査、5.復活のための仮説構築と検証、6.日本企業のケース研究を実施する予定であったが、ほぼ計画通り実施できたと考えている。 平成20年度は、これらのケース研究から得られた資料をさらに詳細に検討してアンケート調査項目を設計し、わが国企業の組織能力とその再構築に関する大量のデータを収集する予定である。また、組織能力の再構築は、時系列的な組み替えのプロセスであることから、コマツの持つ組織能力と、その再構築を年代順にフォローし、アンケートデータによる統計的分析と個別企業の詳細なケース研究とを併用して、研究課題にアプローチしたいと考えている。
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